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超音波中に起こる後嚢の急上昇と誤吸引の予防策

更新日:2021年11月21日

後囊が思いがけず急上昇する可能性が有るのは、エピの処理中以降または、エピが除去された後に残った小核片の処理時です。





水晶体嚢が潰れない要因は、水晶体核が部分的にも存在すれば潰れる事はないことから核は強力な後囊の上昇抑制因子と考えます。また、核を全て吸引除去した後でもエピが残っていれば灌流を保つことでバッグが潰れる事はないので、エピも水晶体嚢の形状を保つ主要因と思われます。それでは、皮質だけが残った状態ではバッグは潰れないかというと、灌流を行っても潰れている事は稀にはあります。しかし、皮質の吸引初期にはバッグが形成されていても皮質の吸引を進めるに従って潰れてくる事はよくある事です。皮質自体も水晶体嚢の形状を保つための要因になっていると思われます。以上から、後囊が思いがけず急上昇する可能性が有るのは、エピの処理中以降または、エピが除去された後に残った小核片の処理時です。こうした状況では、後囊破損の予防のために後囊上昇を考慮した操作を行う必要があります。

それではなぜ灌流を行なっているにも拘らず後囊が上昇してくるのかという疑問が湧いてきます。前房と後房は水晶体とチン小帯からなる隔壁により分けられ、水分が多量に前後房を行き来する事はないと漠然と思っていませんか。しかし、毛様体で産生された房水はチン小帯の間隙を通過して前房水となる事が知られています。そうです、水分は通過できるのです。更に、チン小帯が脆弱な患者さんでは、術中に皮質の小片が後囊下に散見されることが良くあるため、小さな固形物も通過できるようです。また、チン小帯は加齢と共に線維の数を減らし脆弱化することが知られ、白内障手術患者は70歳以上が殆どであることを考慮するとチン小帯を水分は簡単に出入りできると考えられます。一方で、後囊の後方には硝子体ゲルが存在して水分の通過ができない状況にあります。以上から、後囊と硝子体の間に水分が貯留できる領域がないとこうした水晶体嚢が潰れる現象が起きないことが理解できます。

それでは水晶体後面と硝子体との関係ですが、硝子体とチン小帯、硝子体と後囊後面は強く硝子体に接着していて水晶体と硝子体との間には空隙はありません(図26-1)。しかし、加齢に伴いこの接着が剥離して行くこと即ち前部硝子体剥離が生じることが知られています。この結果、水晶体と硝子体の間に腔隙即ちBerger腔が形成されます(図26)。この腔隙には灌流液の出入りが可能で、これに伴い灌流しているにも関わらず水晶体嚢が潰れる原因になっています(図27)。以上からBerger腔の存在がとても白内障手術にとって重要であることが理解できたと思います。手術中に後囊が上昇してくると、後囊破損の危険度は上昇します。ですから、術前に細隙灯顕微鏡により前部硝子体剥離の有無を確認することは非常に重要です。



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