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正しい椅子への座り方のコツ

更新日:2021年11月29日

正しい椅子への座り方を図8に示します


1. 座骨を椅子の座面にしっかりと付けて体重をのせる。

2. 腰椎の弯曲を意識する。

3. 肩の力を抜き、あごを少し引く。

4.頭のてっぺんから糸が出ていて、天井の方にまっすぐ引っ張られるのをイメージする。

5.上半身全体が天井に引っ張られているのをイメージする。

6.体全体がリラックスして、軽く感じられるようになったら完了。

7.手術時の肘が90~100°になるように椅子の高さを40cm前後に調整する。


姿勢の違いにより椎間板にかかる圧力は変化することが知られていて、立位時を100%とすると正しい姿勢で座っても140%の圧が椎間板にかかります。ですから、姿勢が悪い状態で長時間座位姿勢を取っていると腰を痛める原因になります。最も腰に悪い姿勢は、本来腰椎の前弯はCカーブを描いている状態ですが、逆カーブになる事です。また、人間の頭の重さは5-6kgもあるため本来は頸椎に図のように乗っていなければなりません。しかし、60度ほど前屈すると首や肩にかかる負荷は27kgに増加し筋肉が緊張してしまい肩や首のこりと痛みの原因になります。このため、顕微鏡の高さも頭が前屈しない高さに合わせて5m前方を真っ直ぐ見据える様にします。


中規模以上の病院では、外科用ベッドを眼科用に代用していることがありますが、あまり良いことではありません。眼科用手術台(リクライニング方式)は150万程度で入手でき、患者さんの頭が動かないように固定可能で、術者の足がフットスイッチの操作中に制限されないだけのスペースが確保されています。外科用ベッドを代用した場合、腿や膝がベッドに当たってしまいフットスイッチの操作に邪魔になります。手術の上達と医療安全の対価としてはとっても安い買い物と思います。

ベッドの不備によりフットスイッチをあまり使わない術者になってしまうより、両手両足が自由にかつ別々に動かせるようになることが術者にとっての理想です。これをマスターできれば手術時間は飛躍的に短縮し患者負担も非常に軽減します。また、硝子体術者を目指す医師は四肢を自由に動かせるようになることが必須です。


それでは正しい姿勢と椅子への座り方が理解できたところで、ベッドの高さ、椅子の高さ、フットスイッチの位置設定です。設定が完了して、使用感に問題なければ設定位置をテープ等でマーキングしておきましょう。複数術者の施設も多いと思いますが、術者毎テープを色分けしてマーキングしておきましょう。毎回同じ条件下で行う手術は手術上達にとって重要です。必ず行ってください。



設定方法に戻りますが椅子の高さ、手術台の高さ、顕微鏡の高さの順に合わせて行きます。

先ずは、術者用の椅子の高さを40〜50cmにして正しい姿勢と椅子への座り方を参考にして着席し、違和感がないか確かめます。次は、利き足のPhaco machineのフットスイッチの調整です。フットペダルのヒンジ(支点)部に踵を乗せて、フットペダルのゼロポジションで足首が90度程になる様にします。この時、踵は膝より少し前方に位置してフットペダルを踏み込んだ時に窮屈を感じないポジションが良い位置です。また、ペダルの2段、3段の境目辺りが繊細に踏み分けられる位置にするとベストです。逆足の顕微鏡用フットスイッチのセッティングですが、フットレストに足を置き、母趾と第二趾の付け根あたりでジョイスティックを動かせる様にします。踏み分けとして、指の付け根あたりでピント、踵で倍率を変えても窮屈を感じない位置にフットスイッチをセットします。次は、ベッドの高さ設定です。実際にモデルを寝かせてセッティングしてください。男性は女性より胸板が厚く頭が大きい傾向にあるため、平均的な体型のモデルを寝かせてセッティングしてください。軽く手を握り患者さんの眉毛部に指先を置き肘の角度が90から100度になるようにベッドの高さを調整します。この時、上半身が前傾しない様に正しい姿勢を維持して患者さんの頭の位置と術者用椅子の位置を調整します。最後に顕微鏡のセッティングです。最初に、顕微鏡をゼロポジションにします。その後正しい椅子への座り方姿勢を維持したまま、真っ直ぐ5m先を見据えた位置で顕微鏡の接眼レンズが覗けるようにします。理想的な接眼レンズの鏡筒の角度は床面に平行です。頭が前傾すると肩凝りや腰痛の原因になるため避けるべきです。

以上が理想的なセッティング方法ですが、手術環境によりベッドや顕微鏡の高さ調節に制限がある場合は、椅子の高さや接眼レンズの鏡筒の角度で微調整して下さい。

術者のポジション設定が終了したら最後に、Phaco machineの設定が必要です。忘れずに行ってください。Phaco machineは、灌流液の流量を一定にするため、ボトルの0cmの高さ即ち実際の患者さんの目の高さを入力しなければなりません。Phaco machineの設定変更は、機器担当者にお願いしましょう。


さて実際の術野の見え方ですが、障害物のない状況で5m以上先を見た時の視野の中に術野が中央に見える感じになっていますか?そして顕微鏡の影を挟んで周辺視野には、当然手術室内の医療機器やスタッフの動きが見えているはずです。周辺視野を意識することで、調節力の入らない術野の観察と術野しか見えない視野狭窄を予防します。

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