この工程は、前述した様に核を確実に同定して核を分割、破砕、吸引する工程である事をもう一度思い出してください。これを自覚すると、この工程は凄く簡単になります。
Divide and Conquer法
初心者でも行える手技として定着していますが、手術工程が多段階に及び合併症を起こす確率が上がるため、決して推奨できません。水晶体は、水晶体線維が規則正しく整列した組織で割れやすい方向があります。Phaco Chop法はその性質を利用したとても洗練された手術手技です。このため、溝堀により核の破砕、吸引、把持の感覚が掴めてきたらチョップ法への転換を推奨します。また、一般的にはDivide and Conquer法で2分割した核の4分割目はPhaco Chop法が使われているため2分割時にもPhaco Chop法で問題ないと考えます。
Phaco Chop法
Phaco Chop法を解説する前にもう一度水晶体の解剖を復習します。図3-図5を見ながら確認してください。人の水晶体は一生を通じて水晶体赤道部で水晶体線維細胞が増殖し前極から後極に至る弓状の水晶体線維を産生しその水晶体線維は中心部に向かい積み重なって行き徐々に硬い核を形成します。これにより、図3に示すような線維走行を持った水晶体になります。水晶体核も同様の線維走行を持つため、この走行に沿ってフックを打ち込むと核は綺麗に割れることになります。核は、直径4-8mmでCCC縁近くの深い位置に赤道部はあり、虹彩下に隠れるほど水晶体赤道部近辺にはありません。ですから、分割フックを水晶体赤道部近傍まで挿入しなさいという指導医の教えには全く同意できません。また、核の厚さは、2-5mmでチップ直径の2-5倍もあるため、スリーブの部位までチップ先端を核に刺入したくらいでは後囊破損は決して起りません。安心ください。更に、初心者は分割フックをCCCのエッジから前嚢直下に挿入する様に指導されるため、核が前嚢直下にあると誤解していると思います。核分割は前囊直下で行わなければならないと誤解して前囊をフックで引っ掛けてしまう事故が発生すると思います。CCC縁付近の核は前嚢から1.5-2.5mm程度の深さにあり分割フックを前嚢直下に挿入する必要が全くない事を理解できれば、フックによる前嚢の引っ掛けはなくなるでしょう。
核硬度がエメリー分類III以上でなければ分割フックによるPhaco Chop法を行うことを推奨します。III以上ではチョッパーが必要になります。核が非常に硬いものに関してはかなり術式が変わるためここでは核がそれほど硬くない症例に関して記載します。分割フックの先端には楕円形の円盤が付いていますが、円盤は核、皮質、エピ、虹彩、水晶体嚢を押したり引いたりするのに便利な形状をしています。円盤の薄い部分は核を分割するために使い易い形状です。このように分割フックは、種々の手技に汎用性があるためPhaco Chop法に於いても分割フックを使うことを推奨します。そこで、円盤部を円盤、円盤の薄い部分を刀、柄と円盤を繋ぐ金属棒を連結棒と命名してどの部位を使うかを明確化しました。チョッパーも同様に、先端を刀、柄と刀を繋ぐ金属棒を連結棒と命名しました(図19)。
また、水晶体の部位を明確化するため眼球の時間表記を図20に示しておきます。
それでは先ずは核分割の手順の概要を示し、その後詳しく説明します。
1. 皮質とエピを吸引除去して核表面を露出する
2. 核中央部に超音波を極軽度発振して超音波チップを約1mm程刺入し核を吸引保持する
3. 分割フックを核表面を滑らせながら核の赤道部まで進める
4. チップ先端とフックの刀で核を挟み込む様にして核を分割する
5. 核の回転
6. 1/6に核分割して吸引破砕除去
7. 核の分割除去
8. エピの吸引除去
それでは上記工程を詳しく説明します。
超音波チップを前房に挿入したら先ずは核を覆う皮質とエピを高吸引圧吸引により除去します。この時超音波を発振すると核が削れてしまうので吸引モードで吸引を続けこれ以上吸引できなくなった場所が核表面と考えましょう。吸引範囲は、CCCのエッジよりやや内側までで十分です。この時、核までの深さを確認しておきます。その後、チップ先端を核の中心部に向かって1mm程度核に刺入させた後吸引をかけて核を固定します。分割フックは、図6に示すように円盤を核の表面を滑らすように6時方向の赤道部に向かって動かします。この時、核はレンズ状の表面形状であることを意識して滑らすように動かしてください。そうすると、核とエピが分離して行きフック先端が核の赤道部に達すると核の抵抗がなくなります。核の抵抗を直接指先で感じることはできませんが、核の揺れや下方移動等で核と円盤が触れていることを類推します。赤道部を超えてエピまで分割フックが到達するとこの核の動きは消失します。この部位が赤道部であり核はレンズ状の形態をしているため、かなり後囊よりに赤道部は存在します。この時、顕微鏡下に赤道部が確認できる場合とエピを通して赤道部とエピ間に間隙が確認できる場合があります(ビデオ 核処理)。次に、分割フックを赤道部の緯線に沿って4時方向まで動かします。この時、核が回転しなければ円盤部は水晶体嚢と核の間、即ちエピにあります。この位置から0.5mm程度後囊方向に円盤部を進め分割フックの刀がチップ先端方向に向くように回転させ、核をチップと分割フックで挟み込むようにして分割フックだけ動かし核を分割します。ここで間違いやすいのは、エピを十分に剥離せずにまだエピに覆われた核を核自体と誤解することです。(核の大きさには個人差があるので術前に核の大きさを前眼部OCT またはスリットで事前に確認しておくことを推奨します。)誤解したま次のステップに進むと、エピに強い超音波を発振してしまい、エピが大きく抉れたり、後囊破損が起こったりします。これを予防するには、核の表面を必ず同定する事です。核とエピの境界は核から層状のエピが剥離出来なくなった場所なので、分割フックで核の表面にキズが付く位エピを削る事で境界部を確定する事です。分割された核の割面を観察しても核とエピの境界はわからないので分割前にフックにより同定しましょう。
分割フックを核の赤道部の緯線に沿って動かした時に核が回転した場合は、フック先端が核の上を動いたことを示すため分割フックをさらに水晶体赤道部方向に刺入させてから上記同様に核を分割します。
ここでのコツは、分割フックを人間の指先の様に使って核を同定することです(図6)。核は皮質やエピに覆われているため、核分割時に初めてその姿を現します。この工程は核を分割する工程なので、核を同定することが一番重要なことです。核分割が思う様にできない理由の一つは、エピに覆われた核を核自体だと誤解していることにあります(図23)。分割フックを使いエピを核から剥がして行き核とその赤道部を同定することです(図24)。初心者は、分割フックの刀を使ってエピ内を移動させてしまい、エピを核から剥がすのではなくエピを切り裂く様に動かしてしまいます。必ず、エピを核から剥がすように分割フックを使用ください(図6)。(例外としてエピがほぼない核の大きな症例では赤道部は虹彩下に隠れていて同定はできません、こうした症例の術式については後述します。)核の赤道部が同定できれば赤道部近傍の核後面に分割フックの刀を当てて分割を行えば核は綺麗に半分に分割されます(図7,25)。しかし、一回では上手くいかない場合もあるので、核を回転後同様の手技を繰り返すと核は必ず割れます。核の上縁に沿って円盤を滑らす時にチップが核から離れたりエピの分離が上手くいかない場合もあります。この場合は、フットスイッチを操作して吸引力を上げたり、超音波を発振してチップをさらに刺入後吸引をかけたたりして同様の操作を何回か繰り返すことで核は固定できます(ビデオ)。一回上手く行かなくてもパニックにならずに何回か繰り返すことで必ずできる様になります。何回か試行錯誤を繰り返してもDivide and Conquer法より時間が掛かることはまずありません。落ち着いて確実に核の分割を行なってください、この工程が白内障手術の一番の肝となるものです。確実にマスターしてください。繰り返しますが、核分割の工程ですから核を正確に同定することが最も重要な作業です。
核分割の難易度は核の性状によって決まりますが、エメリーIIの硬度の核が一番簡単に割れます。この核は、核の上方から分割フックの刀の部分を核に刺入することでも分割できます。しかし、この方法は核を下方に押すことでチン小帯に負荷かかることと全ての核には応用できないため、全ての核に応用できる前述のチップと分割フックによる挟み込みを推奨します。
この場合、チップ先端は核内ではなくエピ内にあるため核の吸引固定は決してできません(図16)。核が吸引固定できた後は、二分割同様に分割フックの円盤を核前面を滑らす様にエピを核から剥離して核の赤道部を同定して分割フックの円盤部を核の後面まで進めチップと分割フックで挟み込む様に分割します。分割後はチップ先端を核にあてがい超音波を軽度かけてチップ先端を0.1-0.5mmほど核に刺入して吸引をかけながら前房に脱臼させ超音波を引きがけして破砕吸引します。残りの核も同様に分割してバック内中央部で破砕吸引するのですが、核の赤道部が上方に向くように吸引すると核の分割は容易になります。(図17)最初の1/4核が脱臼できない場合も多いので無理する事なく核はその場に残して核分割だけを進めます。こうする事で、分割された核の間に隙間が生まれて吸引除去ができる様になります。
全体を通してのコツは、チップ先端を水晶体嚢中央近辺で操作を行い、超音波を発振する事です。初心者は、核の吸引保持が苦手で核がどんどん崩れて行き最終的に皿状になり水晶体赤道部近辺や後囊近くで超音波を発振してしまいとても危険です。皿状になる主な原因は、初心者が核と信じている場所はエピである事です。核表面の柔らかい場所かエピにチップを刺入し、吸引保持を試みるため核が崩れエピも吸引されてしまいます。その後更に水晶体赤道部方向にチップ先端を刺入し吸引をかける事になります。しかし、その部位は核ではなくエピなのでエピだけが吸引除去されて決して核は吸引されてきません。この繰り返しを何度か続けることで核がお皿状に見えてきます。実際にはまだ核はそれほど薄くはなっていないのですが、初心者が信じる核の場所は前嚢直下に近いのでお皿状でもうチップを刺入できないと信じ込んでいるのです(図21)。お皿になった場合の処置方法は、溝堀と同様に核をできるだけ薄く削って核がまだ相当厚く残っていることを確認ください。その後は、Divide and Conquer 法を使って核を2分割してください。2分割できない場合は分割フックの円盤を核とエピの間に挿入して核を水晶体中央部へと掻き出す。それもできない場合は、核を全体的にできるだけ薄く削ってエピを吸引することで核を前房方向に浮かした後で破砕吸引することで処理できます。
核の吸引把持のコツですが、基本はペリスタでもベンンチュリーでも変わらず、チップ先端が核に刺入していないと吸引把持は出来ません。このため、チップ先端を把持したい部位に押し当て超音波を適切な程度に(柔らかい核では〜5%で十分)発振してチップ先端を0.1-1mm程度核に施入し保持可能な吸引圧により吸引把持します。1/6分割後の核も同様にチップを刺入した後、吸引をかけながら核を水晶体嚢中央部方向に引きます。核がエピから剥離してきたら超音波を発振しながら所謂引きがけをして囊の中央部に移動させて、超音波強度を上げて破砕吸引します。核が柔らかい場合は、超音波の発振を行わなくてもチップは核に刺入できるため発振せずに吸引把持を行い同様に破砕吸引します。
初心者は、核を引いてくることが苦手です。エピに癒着した小核片をエピから剥離して嚢の中央部に引っ張ってくるには、核の確実な吸引とフットスイッチによる吸引圧の微妙な調整が必要です。上手く行かない場合のチェックポイントは、第一に核を確実に捉えているかです。第二に、吸引圧が適切かです。第三には、超音波が発振されていないかのチェックです。吸引をかけているつもりでも超音波が発振されていることが良くあります。
高吸引圧でエピを吸引すると、エピは崩れ吸引除去されてしまいます。場所を変えても核ではなくエピの吸引を繰り返してしまうことで核がお皿状に見えてきます。また、高吸引圧をかけて核を吸引すると吸引圧が強すぎて核が崩れて吸引除去される場合があります。フットスイッチにより適切な吸引圧に調整しましょう。吸引圧が弱すぎると、核を引こうとするとチップ先端が核から外れてしまい核をエピから剥離できません。この場合もフットスイッチにより吸引圧を少し上げて核をエピから剥離しましょう。超音波を発振しながら吸引を行っても核が破壊され、核とチップの間に隙間ができてしまい吸引圧が上昇しません。超音波の発振を止めて吸引を行ってください。以上の三点に気をつけて核処理を行ってください。試行錯誤を繰り返しながら行うことで安全な核処理が身に付きます。それには、フットスイッチの微妙なコントロールを身につける必要があります。確実にマスターください。 核の性状によってチップを刺入し適切な吸引圧で吸引しても核が崩れて把持が出来ない事があります。特に、ペリスタで高吸引圧に設定した場合にはよく起こります。こうした核でも、核の赤道部付近や付着するエピはやや柔らかく粘性が高く、吸引把持が可能なことが多いのでこの部位を把持すれば手術可能です。(このような核は礫岩、エピは粘土に例えると分かり易いでしょうか?砂利を固めた様な核は、上手く把持吸引できてもポロポロ崩れてしまう感じです。エピは、粘土質で粘り気があって把持吸引が行い易い感じです。)上手くいかない場合は、核を薄く削ってからエピと共に処理すると簡単に処理できます。ペリスタでは、吸引圧を下げたモードをプリセットして使ったり、吸引圧のリニア設定モードを用意したりも一つの解決策と思います。前述したようにペリスタは全ての性状の核に対応することは苦手です。
全体を通してのコツは、核をエピから剥がして行きエピは吸引せず意図的に厚いまま残す事です。厚いエピが残っている間は、核の破砕吸引時に後囊の上昇を心配する必要がなくなります。エピを吸引してしまうと、1/2分割後の核片を破砕吸引する場合に後囊が上昇してきて後囊が誤吸引されることがあります。最終的に厚く残ったエピは超音波の発振を最低レベルで発振するもしくは吸引のみで処理すれば後囊破損の確率は0%に近づきます。
また、上記のように核をチップとフックとの挟み込みにより扱うことで水晶体嚢やチン小帯への負荷が減少できると思います。初心者の核分割は核を上方から押して後囊とチン小帯からの反作用を使って核分割を行っていると感じます。このような手技からは早く卒業してください。
核をチップと分割フックで挟み込むコツ
先ずは、どの様なイメージで行えばよいかを眼球模型と両手の示指を使って体験してみましょう。眼球模型から水晶体を取り出し、机の上に置きます。右手の示指を水晶体模型の中心に置き、左手の示指を使って両手の示指のみで水晶体模型を摘み上げて下さい。
皆さんどの様に行いましたか?
右手示指で水晶体の3時方向を浮かせ左手の示指をその隙間に滑り込ませ両指でバランスを取って摘み上げたと思います。右手の指先には微細な力が加わるだけで、左指で右指方向に押さえつけ挟み込む感じになっていたでしょうか。
眼内でもこれと同じ動きをする事でチン小帯に負荷なく、チップ先端での核の保持もそれ程気にせずに核は分割できるでしょう。実際の手術では左手のフックを水晶体後面の奥までは挿入できませんが、水晶体後面にフックが一部でも挿入できればチップとフックで挟み込むことが可能になります。チップ先端を45度に保って核にチップを刺入させ核吸引を行うと核の赤道部は上方に浮き上がってきて分割が容易になります(図17)。
重要事項を何度も繰り返しますが、Phaco Chop法を行うに当たって重要な事は核を分割することだと言うことです。言い換えると、エピの中に隠れている核を掘り出し顕微鏡下に核が確認出来る様にすることです。そして、一番重要なのは核の赤道部が何処で有るかを確認する事です。そして赤道部の後囊よりにフックを挿入することで核は簡単に割れます。初心者はフックを前囊直下から挿入して虹彩縁までフックを移動させて核の分割を試みるでしょう。これではエピが分割されるだけです。フックが運よく核に到達しても核を上方から下方に押す動きにしか成らずチップによる核の保持が出来なくなります。その後、チップとフックで核を下方へ強引に押し込むことになります。これでも核が適度に柔らかければ分割できることがありますが、硬い核が割れることは決してありません。
皆さん毬栗を知っていますか。核の同定と分割、吸引は毬栗から栗を収穫するイメージで行うと良いです。イガがエピで栗が核にあたると考えてください。分割フックをイガと栗の間に挿入してイガをかき分け栗を取り出すイメージです。こんな事でイメージ湧きますか?
初心者が核分割できない最大の理由は、分割フックの先端が核の赤道部の後囊よりに挿入できないからです。分割フックを6時方向の前嚢下に移動させることに集中するあまり眼球自体を下転させる傾向があります(図22)。
こうなると核の赤道部後面には決してフックは到達できずにさらに眼球が下転若しくは、チップ先端とフックにより核を後囊方向に押し込む様になりさらにフックの挿入が困難になって行きます。眼球の下転を予防する手段としては、超音波チップの後面を使って眼球を12時方向に引く。分割フックを6時方向ではなく4時方向に挿入する。これを実践すれば、眼球の下転はかなり予防できます。また、サイドポートの位置を3時から2時方向に変えてみる等も試してみてください。
しかしながら、上記の方法を初心者に実践してもらうと難しいとお叱りを受けることが多いので少し修正しました。
皮質とエピを吸引後、中央より1チップ分左右にずらした位置に一本1.5-2チップ径の深さの溝を3mm程12-6時方向に作ります。次に核を回転します。溝が中央より右寄りの場合は7-8時方向に45-90度回転します。左寄りの場合は5-4時方向に同様に回転します。回転のコツは、母指と示指によりネジを回す様に分割フックを回転して核に回転力を加えると、とても簡単に核は回転します。その後溝の側面と底面の角ににチップを1チップ径刺入させ吸引保持します。その後は前述通りに核分割後核処理を行います。左右にずらした理由は、チップ刺入部を核の中心にしたいからです。またこの方法のメリットは、溝の側面で深い位置にチップを施入するためには無意識に超音波プローブを45度位に保つ様になりかつ核の中心部付近までチップを施入できる事です(ビデオ 初心者用核処理)。更に、初心者にとってDivide and Conquer 法を使った手術では核の2分割後に行う核の回転はとっても難しいです。しかし、この方法は分割前に回転を行うことができる事に加えて、4時から10時方向に核が分割されるため、苦手な核の回転を多用しなくとも引き続き核分割を行える方法です。
また、分割フックを核の赤道部下に上手く挿入できない術者にはチョッパーを使うことを推奨します。刀の長さが約1mm程度あるため赤道部まで刀を挿入できればフックとチップにより核の挟み込みは容易になります(図6)。
挿入の方法ですが、チョッパーの先端を核表面で核の水平面に対して垂直に当てながら核表面を滑らせて赤道部まで挿入します。分割フック使用時と同様にエピを剥離しながら核の赤道部まで移動させます。核の赤道部付近のエピに到達すると急に核から受ける抵抗感(核の動揺等)がなくなるため核の赤道部より周辺にフックの刀が到達したことが分かります。その後図に示す様にチョッパーを核にあてがい刀とチップにより挟み込むことで核は分割できます。その後は、同様に核分割と破砕吸引を進めるだけです。核の赤道部と前嚢の垂直距離は約1.5-2.0mmなので核表面を滑らすようにチョッパーを動かせばチョッパーが前嚢を切開する心配は無用です。後囊の引掛けに関しても水晶体は下に凸の半円形なので心配無用です。
後囊破損の原因の多くが、超音波チップによる後囊の誤吸引により生じます。これは、現状のPhaco machineでは完全には予防できません。そのため、誤吸引しない術式即ちエピを核処理の最後まで残す術式を考案しました。エピを厚く残すためには、核とエピを確実に剥離する必要があります。また、核処理中はエピを吸引除去しないことです。そうする事で、エピを核と誤認する事もなくなり核を確実に破砕吸引出来る様になります。
核が分割出来ないほど柔らかい症例即ち60歳以下の症例では、ハイドロ後デラミを充分行い小さな核を回転できるようにします。柔らかい核はエピや皮質との癒着が緩いため容易に回転します。超音波の発振量を最低レベルにしてほぼ吸引だけで水晶体を除去します。核を回転させながら吸引して行き、その後エピを吸引だけで除去します。エピの除去が上手くできない場合はI/Aに変えて吸引除去も可能です。
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