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患者さんの頭の位置決め

更新日:2021年11月29日

術者の姿勢や患者さんの安楽な体位保持は手術手技以前に大変重要な問題です


眼科術者は1日10-20人の手術を行い、40年に渡り安定した手術を行わなければ成りません。その為に、腰椎ヘルニア、腰痛、手足の痺れや肩こりを起こさない姿勢を保持することを常に心がけましょう。また、窮屈な姿勢を取った場合、手や足の動きに制限が加わり手術手技に悪影響を及ぼすことがあります。 加えて安定した手術手技の為には、患者さんの眼球の12時方向や顔の傾きを意識して患者さんの頭と自身の座る位置を設定しなければなりません。眼科手術は三次元空間を正確に把握すべき手術であり、その為に眼球のセッティングは非常に重要です。

手術の上達の為には、今どこで何が起きているかを正確に把握すること即ち現状認識がとても大切です。毎回同一条件下で手術を行う事で、手術中に生じたあらゆる事象の正確な判断が可能となります。逆に、毎回セッティンングが一定しないとセッティングによるものなのか手技によるかの判断が困難になり、何処を修正すべきかの判断が出来ません。 一方、患者さんにも安楽な姿勢をとってもらうことがとても重要です。さもないと、手術中に何回も動いたり、急激に動いたりの原因になりその結果合併症にも繋がることがあります。


頭のセッティンングは、患者の顔面が床面と水平になるようにします。 コツとしては、実際の手術位置に座り、顔面が左右上下にずれていないかを確認することです。

話が少し脱線しますが、手術中にこちらの指示通りに顕微鏡の光源方向を固視できる患者さんが殆どですが、上転や下転する患者さんも多く存在します。特に、超音波チップやI/Aチップが眼内に挿入されると強く閉瞼して眼球が上転する患者さんと眼球を下転する患者さんに分かれますが、意外と下転する患者さんが多いです。眼位が保てないと、水晶体全体に均等にピントが合わなくなり手術がやり難くなります。加えて、眼球が傾いていることに気づかずに手術を行うと、三次元的位置関係を誤認して思わぬ合併症を起こす事があるため固視を維持するように声かけをしてください。

患者さんの中には術中徐々に顎が上がる患者さんと、顎を引く患者さんがいます。顎が上がると、下眼瞼が角膜にかかり眼内の視認性を阻害します。逆に顎が下がると術中上眼瞼が角膜にかかります。顎が上がる場合(下眼瞼が角膜にかかる)は、顎を上げないようにと声かけをするだけでは手術経過とともにまた顎が上がってくるのでヘッドレストを上げるか頭の下に折り畳んだタオルを入れるかすると動かなくなります。顎が下がる場合(上眼瞼が角膜にかかる)は、顎を引かないように声かけすると殆どその後は動かなくなります。また頭のセッティングが悪いと、眼内操作器具が眼窩骨に当たり手術を邪魔します。顔面が左右にずれていると前額部に置いた両手の位置感覚にズレを生じさせ空間認識に支障を来します。また、目頭に水が溜まりやすくなります。更に、術中ガイダンスを使用する場合には顔面が左右上下にずれているとガンダンスの誤認識が発生します。


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