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器具の把持方法(利き手が右の場合)

更新日:2021年11月20日

全ての器具はペンホルダーを基本として、母指、示指と中指の3指で持つことを実践して下さい。残る薬指と小指は接地用に使います。加えて左手を添えることで右手の安定的な動きの補助をしてください。添え方は、左手の母指、示指、中指の3本を器具または手に添えてください。左手の3指は右手の支えや右手の動きの補助をすると共に器具の上下方向や左右方向の程度を感知するセンサーの役割や、片手では困難な機器の操作を両手による協調運動で繊細に行う役割を担います。


左手の示指のみを右手の支えとして使っている術者がいますが、左手は支えとしての役割だけを担うわけではありません。右手だけでは難しい手技を左右の手の共同運動で簡易化したり、右手に把持した器具の傾きや方向のセンサーの役割も担います。左手の能力を最大限に活用した手術を会得しましょう(ビデオ 5面分割)。

加えて、左右の手は何かに接地させて下さい。手台付きのベッドもありますが、後囊研磨時等手台に腕が接地していないことがしばしばあるので患者さんのオデコ周辺に左右の手を接地する事を奨励します。患者さんが頭を急激に動かした時などに両手が瞬時に感知、反応して危険回避にも役立ちます。



Hydro dissection、 hydration 、OVD注入等は右手の接地が困難な手技になりますがその場合は左手でシリンジを持ち右手でシリンジを押す様にして最低何方かの手が接地する事を心がけて下さい。

さて、左手に鑷子を把持して眼球を固定しながら操作を行う術者がいますが、初心者にとっては利き手であっても片手だけで器具を扱うのはとても難しい事です。左手を右手に添え、手の震えや不随意運動を抑制し正確な操作を基本として下さい。患者さんの眼球運動を抑制するためには、顕微鏡の照明燈の固視により殆どの患者さんの眼球運動は抑制でき左手の鑷子による固定は必要ありません。それでも抑制されない場合は、助手に固定を依頼してください。左右両手を使っての手術のメリットは計り知れません、両手で手術しましょう。

60歳以下で後囊下白内障や皮質白内障が強い患者さんでは、照明燈が眩しくて固視が全くできない事があります。この場合は、照明燈の光量を下げたり光の当たる範囲を狭めたりすることで対応します。Hydro dissectionを行えば眼内への散乱光は抑制され光量は元に戻しても眩しがらない様になります。この工程以降は、固視も保てる様になり手術も安全になることが殆どです。

最近のナイフ類は切れ味が鋭くなっていて、ナイフの穿刺中に眼球が動くことなく切開が可能です。これも切れ難い場所は助手が手助けください。また自身の指で押さえることで眼球の動きは止められます。ディスポ製品としてマニーのナイフが一番切れ味良く値段もお手頃なのでマニー製のものを推奨します。

左手の鑷子による固定が必要ない理由として、手術器具を眼内に挿入すればその器具により眼球固定が可能となるからです。このため、OVD注入用のサイドポートさえ作成できればそのポートに器具を挿入することで眼球固定はある程度可能です。更に、片手を眼球固定だけに使うほど勿体無い事はありません。人間は左右の手の共同運動により片手より精巧な動きを生み出す事が出来ます。白内障手術は精巧な器具の動きが要求される手術です。両手の共同作業による精巧な手の動きをマスターしましょう。

前述したように人間の指は、一本だけ動かそうとしてもつられて他の指も動いてしまい一本だけ動かすことが苦手です。言い換えると、人間の指の動きは数本の指を連動して動かすように脳から指令を受けているとも言えます。一本の指を巧みに動かす作業として思い浮かぶものは、ピアノやギターなどの演奏です。こうした演奏は、幼少時から毎日何時間にも及ぶ練習により習得されるもので並大抵の努力では習熟できません。それでは話を眼科手術に戻すと、前嚢切開や内境界膜剥離では鑷子の数マイクロ単位の動きを要求されます。この手技は、数本の指を連動させて動かすことにより行われます。それでは何本の指を連動させて動かすのが良いのでしょう。また話は脱線しますが、日常生活で指を巧みに動かす作業を思い浮かべてみましょう。例えば、食事中に使う箸やナイフ、ホーク、物を書くために使うペン、どの様に持っていますか?全て、母指、示指と中指の3指で持っていますね。この3指の連動した繊細な動きは、幼少時から毎日行なってきた行為で手術習いたての研修医でも指導医でも技量に大きな差はなく、この3指を使う事で安定した眼科手術手技が大した練習もせずに行えると思われます。以上から、全ての器具は母指、示指と中指の3指で把持して手技を行う事が推奨されます。眼科手術用の鑷子は母指と示指の2指で持ちたい形状をしていますが3指で把持することを推奨します。母指と示指では筋肉量が全く異なっていて両者をバランスよく動かすことは非常に困難であり、繊細には動かし難いです。この鑷子を二本指で把持した初心者は、前嚢を把持しようとすると意図したところからズレてしまって掴めないことが良くあります。これを3指での把持(ビデオ)に変えて、親指のみを動かし示指と中指で支えるように使うことでゆっくり意図したように鑷子を扱えるようになります。試してみてください。

もう一つの理由は、2指で持つと可動域が制限されCCC作成の360度回転の動きが出来ないからです。3指による持ち方に変えると可動域が広がり眼内操作を容易に行えます。



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