epinucleus(エピ)を厚く残したいからです。
エピは玉ねぎの様に何層にも重なり合った構造をしているためデラミを何度も行うとエピが何層にも分離して水晶体後面を確認し難くなります。一方、ハイドロの後でデラミせずに核の破砕と吸引を進めて行くと、核とエピの境で分離が起きてエピ全てが核から分離され、エピを厚く残すことができます。
エピが厚く残る事で核破砕時に後嚢の上昇を抑え安定した核破砕吸引が可能になります。即ち、後嚢の上昇を抑制し、思いがけなく核破砕が突き抜けてもエピが後嚢破損を防止します。また、厚いエピは一塊として超音波チップで簡単に吸引できます。 逆に、薄いエピはチップによる把持が困難であり吸引しても突き抜けることが多々あります。更に12時方向に取り残された厚いエピはフックでの回転が容易でその後、超音波チップで吸引可能です。しかし、薄いエピは回転も困難であり且つ吸引し難くチップでの後嚢誤吸引を起こし易い傾向があります。
欠点としては、厚いエピがあると後嚢の状態が確認できないため、確認できるまでは慎重な操作が必要です。また皮質と水晶体嚢との癒着が強い場合は、エピと皮質、皮質と後囊の癒着を外した後に吸引を行わないとエピの吸引除去に伴い後囊が上昇してきて後嚢を誤吸引する可能性があります。しかし、癒着が強い症例は事前に予測可能で、後囊下白内障や後囊の線維化、後囊近傍の強い皮質混濁のある白内障は癒着が高度の場合があります。
一方手術時間の短縮や効率を優先する立場に立てば、核処理と同時にエピも処理する方が良いと思われます。しかし、厚いエピを残さずに核処理を行った場合、術中に後囊が上下して不安定になる確率は高齢者を中心にかなりの率になります。最後に残った核片を処理するにあたり後囊を誤吸引する事故もよく経験されると思います。こうした事故をほぼゼロにする目的と核処理時に後囊の状態を考慮せずに安心感のある眼内操作を目的として核処理時にエピを厚く残すことを推奨しています。残ったエピは超音波チップによる吸引のみ若しくは弱い超音波の発振のみで処理が可能で、例え後囊を誤吸引しても超音波の発振がないため後囊破損に至ることは極稀です。
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