術後眼内炎を発症すると失明に至ることもあるため、消毒、洗眼は十分行いましょう。しかし、患者さんにとっては術前の洗眼が最も不快な処置であるため、協力を得難い処置です。
このため、十分に洗眼を行うことは意外と難しいものです。そのため、消毒液をかける処置と眼球を洗う処置とは別々の処置者が行うことを推奨します。
イソジン原液で眼球周囲を消毒後、看護師等に40倍イソジン液を眼球にかけて貰いながら、指の腹で眼瞼縁を洗浄します。睫毛根部には分泌物、目脂、常在菌が付着しているため、40倍イソジン液と指の腹で洗い流します。老人の目頭と目尻には目脂や分泌物が付着しているため指の腹でゴシゴシして洗い流します(ビデオ 洗眼)。40倍イソジン液は他科でも使用されるため、精製水で希釈されていることがあります。術中にこのイソジン液をかけながら手術を行うと術後半には角膜が混濁して前房視認性が落ちてきます。必ず、生理食塩水またはBSSで希釈したものを使用しましょう。
眼球表面や瞼板下は流す程度で良く開瞼器で開瞼した後に40倍イソジン液を大量に流し、消毒します。術中は40倍イソジン液を常に振りかけながら手術を行いましょう。
ヨードアレルギーの患者さんには
0.05%マスキン水(クロルヘキシジン:ステリクロンW、ヘキザック水W)による洗眼を推奨します。界面活性剤やアルコールの入ったものは禁忌です。術中使用液にもヨードが使えないので灌流液を使いましょう。
認知症患者を手術する機会が増えてきていますが、術中に協力が得られずに局所麻酔での手術を諦めなければならないことが稀にあります。こうした患者さんが、初期には協力的で手術がある程度進行してから錯乱状態になる場合があります。そうなってしまうと、周りの看護師さんや助手の医師に頭手足を押さえてもらわないと手術は続行不可能になってしまいます。こうした患者さんを事前に診断できないかよく質問を受けますが、洗眼が通常にできる認知症患者は問題なく手術は可能で、麻酔が十分に効いている5-8分以内に手術を終えることを推奨します。認知症患者さんは、我慢の閾値が低くこちらの説得を受け入れない事が殆どです。手術室に入る前に診断するためには、外来での細隙燈顕微鏡診察時に不快と思われることを沢山行いそれに耐え得るかを観察することです。点眼する、強い光を浴びせる、睫毛を抜く、強く開瞼する。こうした事に抵抗感を示さない患者さんであれば認知症であっても手術は可能なことが殆どです。
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